リバプールが6度目のビッグイヤーを掲げて5カ月程度が経とうとしている。
プレミアリーグ勢で言えばマンチェスターシティが優勝オッズで1番可能性のあるチームとされていたはずだ。
しかし、そのマンチェスターシティは3冠こそ達成したもののチャンピオンズリーグの舞台においてはスパーズに敗れてまたもやトロフィーを手にすることができなかった。
3冠を達成した王者に対し、勝ち点97を稼ぎシーズンを通して1敗しかしていないにもかかわらずリーグタイトルを取ることができなかったリバプール。
しかし、多くの人の記憶にも残っているだろうバルセロナ戦のような死線を乗り越え彼らは欧州王者の称号を得たのだ。
では、なぜリバプールは歴代3位となる勝ち点97を稼ぎ、欧州王者になることができたのか。
その理由に迫ってみよう。
優れていた圧倒的なバランス
スアレスがいたころのリバプールの特徴は圧倒的な暴力ともいえるほどの攻撃力だ。
上位チームだろうと構わず得点を挙げ続け、欧州最強の攻撃ユニットを作り出した。
いわば腹を空かせたチーターだ。
そのころと比べると今はどっしりと構えた狼のようだ。
フィルジル・ファンダイクとアリソンを獲得したことで守備の再構築を図り、まずは後ろの安定を得ることに成功したのだ。
監督のユルゲン・クロップは「守備の本も書ける」と言っており、持ち前のプレッシングスタイルを殺さぬような守備システムを見事に作り上げた。
ストーミングという言葉を聞いたことがある人は多いかもしれない。
ボールを失うことをチャンスに繋げる彼らは多くの負担をかけてボールを奪いに行く攻撃的スタイルとは違い、効果的なロングボールを用いることで効率よく得点を奪っている。
つまり、フルスロットルで走るサッカーとは違う細部まで計算された戦術により彼らはアリソンとフィルジル・ファンダイクを基盤とした強固な守備に自慢の攻撃性をミックスさせた究極系を作り出そうとしていたのだ。
その結果、負けないサッカーを展開することができるようになりリーグでも勝ち点をコンスタントに稼ぐことができた。
大きかったファビーニョの存在
ファビーニョを獲得してしばらく経った時、彼には移籍報道が出た。
1秒たりとも試合に出ていなかったからだ。
ところが「そろそろ熟したころか」と言わんばかりにユルゲン・クロップが彼を使いだした途端にチームの中盤におけるバランスが一気に向上した。
キャプテンであるジョーダン・ヘンダーソンを一つ前で使えることも理由の1つだが、中盤の底でチャンスをことごとく潰し、無難に左右にボールを散らせるファビーニョは非常に需要な存在であった。
ベテランのような眼を持つ彼は危険な局面でイエローカードを貰うこともできるのだ。
戦術の一つにもなっていたサイドバック
サイドバックの重要性は年々増していると言われている。
それを象徴するかのようにリバプールの両サイドバックはともに2桁のアシストを記録したのだ。
彼らの上がりは相手を悪夢に陥れ、前線の味方たちは最高の瞬間を迎える。
個々での突破をすることもでき、中にいる味方との連携で一気にエリア内に侵入してくることもある。
それを防ごうと外に追い出しても彼らの正確なキックは確実に中にいる選手たちに届くのだ。
まだ両選手ともに年齢も若く、サイドバックとしてこれから成熟さも増してくるだろう。
今シーズンもリバプールはトロフィーを勝ち取るとしたら彼らは確実にその中心にいる選手たちだろう。
爆発した個々の力
欧州王者のリバプールは、実はグループリーグで姿を消す可能性も十分にあったのだ。
最終のナポリ戦、絶対ともいえるチャンスがナポリフォワード、アルカディウシュ・ミリクへと転がりこんだ。
ベスト16に進むのはリバプールか、ナポリか。
その決定を下すあまりにも大きい一瞬の出来事だ。
それを神がかったセーブで救ったアリソンがいたからこそベスト16へ駒を進めることができたのだ。
そしてリーグ戦やあのバルセロナ戦で得点を決めたディボック・オリギ。
幸運だという人もいるが明らかに彼個人の力が局面において集中し、爆発していた。
チームとしてのまとまりに何ら問題のなかったリバプールだが理屈で説明できない試合でチームを救ったのはそういった個人による爆発的な力だったのだ。
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