”ダイソン”
リバプールのチーム内でファビーニョはそう呼ばれている。
さらにはフィルジル・ファンダイクには「スキンヘッド」と呼ばれるなど試合中以外でも良い存在となっているようだ。
モナコからリバプールに加入したこのブラジル人はあっという間に守備的ミッドフィルダーとして世界的な選手にまで成長し、今ではチームに欠かせない選手となっている。
しかし、その道のりは決して簡単なものではなかった。
今回はそんなファビーニョについての紹介をしてみよう。
モナコで見せた才能の片鱗
元々は右サイドバックでプレーしており、長い手足を活かした守備と巧みな足元の技術でサイドを駆け抜けていた。
しかし、レオナルド・ジャルディム監督により中盤にコンバートされるとその能力はさらに活かされるようになった。
チャンピオンズリーグでも躍進したことで有名となったが、ティエムエ・バカヨコとのコンビは破壊力抜群で当時最恐の中盤ユニットとして恐れられていた。
優れたフィジカルを活かしボールを運ぶバカヨコに対し、まるで職人のようなボール刈りと正確なパスでモナコの攻撃をサポートするファビーニョはまさにチームの心臓であった。
モナコからリバプールへ、しかし…
そんなファビーニョは昨シーズン夏の移籍市場で突如リバプール移籍が発表された。
まさに電撃移籍である。
£40mとも言われる移籍金に見合う活躍ができるはずだと周りからも太鼓判を押され、リバプールは非常に良い買い物をしたと言われていた。
しかし、開幕して2か月が経ってもリーグ戦で出番はなかったのだ。
リーグアンからプレミアリーグへの移籍ということもあり準備期間が必要だったのだろう。
冬ごろになるとファビーニョの出番が徐々に増え始めた。
ここでもまた問題が発生したのだ。
リバプールの4-3-3システムにおけるアンカーを務めることができなかったのだ。
判断力が鈍く、プレッシャーをかけられてしまうとどうしても次の一歩を出すことができず守備でも前評判ほどの能力を見せることができなかったのだ。
ダブルボランチで使ってみるのはどうだ、右サイドバックに戻すのはどうだろう、こんな声が徐々に上がり始めていた。
もしかしたらファビーニョ獲得は大失敗だったのではないか…
一気に評価を取り戻し、欠かせない存在に
そんなファビーニョを心配する声は一瞬で無くなってしまった。
ユルゲン・クロップらコーチ陣のアドバイスなのか、それとも自分で研究をしたのか、そのどちらもあったのかもしれないがあっという間にチームにフィットしたのだ。
豊富な運動量に確実にボールを刈り取る守備力、カウンターを止めることができる頭の良さにイエローカードを貰う守備も見事にできるのだ。
さらには無難に散らしたかと思えば縦パスでスイッチも入れることができる。
アンカーとしてこれ以上ないほどの出来を見せ始め、その能力自体も伸びているようだった。
チームの危機を救い、世界最高レベルまで
国内だけではなくヨーロッパの舞台でもその能力を遺憾なく発揮しているファビーニョはブラジル代表にも安定して選出されるようになり、カゼミロを出し抜いてスタメンでも良いのではという声まである。
先日のマンチェスターシティ戦では見事なミドルシュートまで決め、もはやアンカーとして足りないものは何もない次元の世界にまで来てしまったのだ。
ふさわしい発言であるかは置いておき、アーセナルのウナイ・エメリ監督にも「ファビーニョが欲しかった」と言われている。
アンカーというポジションは選手の舵取りを行うため非常に技術と思考能力が試されてしまうポジションだ。
そのアンカーにおいて世界的名手であるシャビ・アロンソもファビーニョのことを称賛している。
まさにこの1年でリバプールの心臓部となったファビーニョ。
チャンピオンズリーグを制したものの彼らにはまだまだトロフィーが必要なはずだ。
そのチームをこれからファビーニョがどう支えていくのか、じっくり見ていこう。
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